知識社会の現代では、知識とそれを使っての思考が尊ばれ、それに比して感情は一段立場の低いもので、どちらかというとやっかいなものとして扱われる傾向が強いと思います。
和歌が尊ばれ、そこで奏でる感情の美しさ豊かさや感性の鋭さが尊ばれた平安時代とは、大きく違うと思います。
私個人でいうと、感情は悟りの妨げという思い込みがあり、知識と思考偏重の価値感に長く染まっていました。
しかし、カウンセリングでは、人間にとって感情がいかに大事な役割を果たしているかを痛感します。
思考というのは、比較的忘れやすいものです。その思考も、感情や意志を伴って信念にまでなったものは忘れることはありませんが、たんに色々頭で考えた内容は、数年もすればほとんど忘れてしまいます。過去を振り返ってみても、その時期の思考だけを切り出してはっきり思い出すことは困難です。
思考よりもっと忘れやすいのは知識です。それは、テストが終わるとすぐに教科書の内容を忘れてしまった学生時代を振り返るだけでうなずけます。記憶力の良かった青年時代ですら、記憶の定着には相当な努力が必要でした。
それに対して、感情は、そう簡単には忘れません。相当以前のことであっても、傷ついた感情、悲しみ、怒り、喜び、そうしたもので特に強い感情は、しっかりと記憶に残っています。その時の情景や思考内容を忘れていても、その時期の感情は残りやすいので、感情を手掛かりに思い出すことができます。
つまり感情というのは、覚えておくことができるものなのです。だから強く残っている感情を手掛かりに、自分が経験し、しかも抑圧していた気持ちを掘り起こすことで、過去の自分と向き合い、心の傷を癒したり自分の壁を乗り越えることができるのです。
深層潜在意識にあると思われる過去世の記憶であっても、感情をまず感じ取れるようです。その感情を思い出し、その延長線上で見えてくるものを手繰りよる方が、正確に過去に経験して傷となっている内容に辿り着きやすいと言えます。なにを過去世で考え経験したか、思考として取り出すことははるかに難しいです。
このように感情は覚えておきやすいものなので、反省に使えるのです。反省は失敗など起こってほしくない出来事、自分として繰り返したくない出来事が起きたとき、それを繰り返さないためのするものだと思います。つまり自分に修正をかける作業です。
何かで失敗した時に、その時にどういう感情がどの時点で起きていたか、その結果何が起きたのかをしっかりと思いだし、記憶しておくのです。すると同じ状況が起きそうになったとき、同じような感情が出てくるので気づきます。すると「これはこのままではこうなる、だからここで修正しなければならない」と判断ができます。
ですから反省で一番重要なことは、その時の感情を見つめ、それを覚えておくことなのです。それによって自分がおかしな行動をしだすときの自分の状態に気づけるからです。
そうすると日々の中で自分を見つめる時に一番大事なのは、自分の感情を見つめることであることが理解できるのです。
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心理カウンセラー 種村修 (種村トランスパーソナル研究所)
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