「自己否定の氷を溶かす」の連載はここで最終回となります。
今回は、自己否定の氷(トラウマ)を抱えている人の話を聴かせていただくとき、聴き手がもつべき心構えを述べたいと思います。
まず自己否定のきっかけとなった苦くて(にがくて)酸っぱい体験を否定したり拒絶してはいけません。その方が、いやな経験をした時の感情を思い出し味わうことによって、その苦さや酸っぱさは甘さに変わることを知っている必要があります。それを避けては成長はありません。それが向き合い味わうということです。
トラウマ経験を思い出すことは、時には症状が悪化するように見える場合もあります。
しかし、トラウマ体験そのものではなく、その時の自分の感情に焦点を当てて見つめ味わってもらうのです。誰が悪いとかではなく、その時に感じていた気持ちを思い出し味わうのです。
そしてその奥にあるもの(感情や気持ち、もしくは信念)を探るのです。それが成長につながっていきます。
そういうことを理解し聴くことが、まず聴き手にとっては必要です。苦くて酸っぱい体験に同情し、それを表面的に慰めても、それだけではその方の成長にはつながりません。
同時に、自己否定する以前にもっていた純粋な気持ちを思い出し、それを大切にすることが必要です。結果が悪くても、動機が純粋な場合は、その動機まで否定してはいけません。自己否定する前の純粋な気持ちは肯定するべきものです。
同時に、自己否定する以前にもっていた純粋な気持ちを思い出し、それを大切にすることが必要です。結果が悪くても、動機が純粋な場合は、その動機まで否定してはいけません。自己否定する前の純粋な気持ちは肯定するべきものです。
二つ目には、その方の過去現在未来のすべてのエネルギーを観て、その方の可能性や成長を信じて、一緒にそこにいる(存在する)ことが必要です。つまり苦しんでいるその人の現在を見るだけではなく、ずっとさかのぼった過去から、永遠の未来のその人のエネルギーに目を向けて、その人が変化し成長し輝く可能性を信じてそこに居るということです。
そこに居るというのは、気持ちが寄り添っているという意味です。
それによって相手の方の「自分を信じる心」にエネルギーを送ることができます。その人の「自分を信じる心」が、その人の成長を促し、氷を溶かします。
三番目に、決して焦らないで待つということです。これは非常に難しいことです。
聴き手は、ともすれば時間を区切って結果を出したいと焦るものです。それはその人の為と言い訳しがちですが、実は自分がその状態をいつまでも見ているのがつらいから、早く結果を出したいのかもしれません。あるいは自分が関わることで結果が出ることを楽しみにしていて、結果を焦っているのかもしれません。
その人が変化する時間は、その人の魂が決めることです。どのぐらいの時間とプロセスが必要なのかは、その人の魂にしかわかりません。
それを焦らないで待つということが、寄り添うということです。
その人を信じて待つことで、その方も焦って自分に絶望したりせず、時間を耐えることができます。これは非常に大きな愛情だと思います。
以上のことは私がいつもできることではありません。失敗して、反省することも多々あります。それでも自分もそういう人の存在によって乗り越えられた経験があるので、何が必要かは理解できます。また自分自身がそういう聴き方ができたときは、よき方向に向かうことも体験させていただきました。
この連載を読まれた方が、是非良き聴き手となって、誰かの自己否定の氷を溶かす手伝いをしていただけることを願っております。
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心理カウンセラー 種村修 (種村トランスパーソナル研究所)
※メールカウンセリングや電話でのカウンセリングを行っています。
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電話 090-8051-8198
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