私たちは、いまここに存在しています。
存在しているということは、それだけでエネルギーが出ており、影響力も出ています。
そして、この存在を否定すると、それに対する反作用が生じます。
反作用が起きると、「存在の否定」を修正する何らかの働きが始まります。
これは「存在の肯定」へと向かうように、いざなわれているように見えます。
「存在の否定」のなかで、一番身近に頻発するのは「自己否定」です。
これは現在人が誰しも直面する可能性が高い心の病理だと思います。
一番それを表わしているのはうつ病の蔓延です。
うつ病は「否定の病」です。
自己否定の極端な思いが、自分のエネルギーを枯渇させ、停滞させ、動けなくさせます。固まっていくのです。
今を否定し、過去を否定し、未来を否定します。
自分を否定し、自分の能力も、未来の可能性も、過去の実績も否定します。
希望が無くなり、周りがまぶしく見え、自分がみじめになります。
貧困妄想や病気の妄想が執拗に湧き、力を失い、極端に依存的になります。
自己否定するのみならず、その気持ちを他者に投影するので、他人への否定の思いも湧き上がります。人間関係が破たんし、引きこもります。
また自殺の誘惑にさらされ、実行してしまう人も多いのです。
自殺は「存在の否定」を行動化したものです。
うつのつらさは、経験するとわかるのですが、出口の見えない苦しみです。
極端な否定の病だからです。
しかし、時がたつ中で、人との出会いがあり、何かに打ち込む機会がうまれ、それに打ち込む過程で自己信頼が芽生え始めると、霧が晴れていくようにうつ病が徐々に回復していきます。
自己肯定への心境の変化が、うつ病への特効薬であると思います。
実はうつ病の苦しみは、「自己否定」への「反作用」ではないかと思うのです。
その苦しみ自体が、「自己否定」が存在本来の在り方から外れていることを気づかせようとしているのではないかと思います。
自己否定の対極にあるのは自己肯定です。
深いところから自然なありようの中で「自己肯定」ができることが大切だと思います。
うつ病のような重い症状でなくても、軽いところでは、「私なんて」という言葉は「自己否定」の症状です。これはやや軽い自己否定です。
存在を否定するということは、根源的に考えてみると、大宇宙の生み出した存在を否定するということです。
大宇宙を生み出し支えている根源的なエネルギーの否定です。
それゆへに否定には反作用がともない、宇宙が自己修正しようとしているのではないかと思います。
人間は、顕在意識、潜在意識、超越潜在意識、そして肉体を含めた小宇宙です。存在の否定は、存在の核である大宇宙の意識の否定にもつながるので、小宇宙のなかで自己修正の働きが起きるということではないでしょうか。
自己否定の克服は、人間の成長にとって非常に大事だと思います。
自己肯定のひとつは、自分が好きになるということです。
自分が好きになり、自分が楽しく生き生きと働くと、私たちは本来の個性が最も輝き、私たちの存在の本来の素晴らしい影響を発揮するのではないでしょうか。
私たちのカウンセリングの目指すものは、大いなる肯定へ向かう方向へと人生を軌道修正することです。
種村修(心理カウンセラー・種村トランスパーソナル研究所所長)
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