怠惰とは何かと追究すると、「個性が働かない状態」が「怠惰」であると定義できると思います。
個性はその人らしさであり、個性が働くとはその人らしいエネルギーが生き生きと動いている状態です。それが停止する状態が怠惰だと言ってよいと思うのです。
この意味で怠惰とは、言葉を換えると「固まっている状態」を意味します。
固まるとは、その人が自分らしくない状態で固定して変化しなくなることです。
現実には動作が鈍くなり動けない状態になる場合が多いと思います。一番わかりやすいのは、うつの時です。うつの自分を見ると、本当に固まって動きを止めています。
体が動きまわっていても、その人らしさが消えて、その状態がずっと続く場合も固まっているといえます。個性が発揮されていないので、これも怠惰の一種です。肉体が動き回っていても本来のその人らしさが止まっているなら怠惰な状態だと言えると思います。
その人らしさの源泉は実は丹田にあります。
丹田が動くことがその人の個性のエネルギーが動くときです。
うつの時は丹田が動きを止めて、停止しているのではないでしょうか。
誰かのエネルギーののりうつりを受けている時も、その人らしさが決定的に損なわれていますので、やはり丹田は動いていません。
こういうときは丹田の部分に別のエネルギーが入り込んでいるように感じることもあります。まるでヤドカリです。貝の本体が追い出された後に、ヤドカリがそこを住まいに入り込んでいる状態です。
人生では大変ショッキングなことがあると、引きこもって動きたくなくなる時もあります。大病で入院する時もそうです。病気で肉体が苦しい反面、現実から逃避できるのでほっとする気持ちが起きる時があります。
こういう人は、怠惰に罪悪感を持っていることが少なくありません。
自分が怠惰になることを許せないのですが、肉体が苦しんでいると、怠惰になる口実ができます。周囲への口実でもあるのですが、一番は自分が怠惰になることを許すための口実です。病気にでもならなければ長く休むことを自分に許さないタイプの人は少なくありません。
こういう人ほど、「怠惰になりたい自分」を否定せずに認めてあげることが必要です。
そうしないと頑張りすぎて、肉体を壊すところまでやりすぎてしまいます。
人生には休憩する時も必要です。じっとしてエネルギーが回復するのを待つ時期も必要です。そのときに「怠けたい、怠惰になりたい」と思うことは、罪悪ではありません。一種の安全装置が働いているのです。
こういう時、心の中では二つの自分が戦っているのかもしれません。
一つの自分は、自分が怠惰になることを許さない自分です。
この自分は、人が怠惰にしていることも許しませんが、実は人を裁く前に自分自身を裁いています。自分が怠惰になることを許さないということは、本当はゆっくりと休みたかったのに事情があって少しも休むことが許されない経験があったのではないでしょうか。そうやって自分を鞭うたねばならない経験をしているのではないでしょうか。
たとえば地震災害の人命救出の当事者になった時など、そういう思いをもつことはやむを得ないと思います。今世ではなくても過去世でそういう人生を経験すると、深層潜在意識の中に怠惰を許さない意識が生まれると思います。
もう一人の自分は、個性を発揮しすぎて傷ついたりダウンした経験があって、もう動きたくない、止まっていたいと思う自分です。この自分は傷つきを抱えていることが多いと思います。
こうした二つの自分がいる場合、前者の自分が後者の自分を否定し裁きます。何故裁くのかというと、前者の自分が、「自分が怠惰になることは許されない」「怠惰になる自分を許せない」という気持ちを持っているからです。本当は怠惰になりたいという欲求があるのにそれを否定している姿です。
この人はそういう自分の本音を抑圧しているので、自分の本音に気付いていないのかもしれません。
たとえば「早く片付けたい、人より早く処理したい」と思うのは、本当は「早くやってしまってゆっくりだらっとしたい」という気持ちが奥に働いていることがあります。その本音に気づかないで、いつも張りつめているのです。
個性を発揮して働き過ぎていて、その裏側で「怠惰になりたいという気持ち」を抑圧している場合は、怠惰になりたい自分を認めてあげて、集中的に怠惰になり心身を休めることも必要です。怠惰になりたいという欲求が起きるのは、これは心身の安全装置だと考える必要があるからです。
逆に、怠惰のまま丹田が動かなくなり、個性が発揮できない状態が続いているのであれば、丹田を動かす努力が必要です。個性が発揮できずに時間だけが過ぎていくのは、実はとんでもない苦痛のはずです。
おそらく何かから逃げているのではないでしょうか。
だとすると自分が向き合いたくない現実と真正面から向き合う勇気を発揮することが必要になります。自分を変えるには、まず行動することが必要です。行動し、向き合った時に、個性のエネルギーが働き始め、自分らしさを取り戻せるのです。
種村修(種村トランスパーソナル研究所・心理カウンセラー)
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