ある中年の男性は、こんな夢を見ました。
彼は久しぶりに、いつも相談に乗ってもらっている知人に会いました。その時に知人から、まったく新しいことを教わり、心がざわつきました。
「そんな話は知らなかった。他の人はもう聞いているのだろう。自分は遅れているにちがいない。」
そう思ったのです。
すると夢のシーンが変わりました。今度は以前に所属していた団体の長が、まったく新しい話をしているシーンが出てきました。初めて聞く本の名前も多くあり、彼はもっと心がざわつきました。
「しまった、自分は後れを取ってしまった。他の人からずいぶん遅れてしまった。遅れを取り戻さねば。何冊も本を読み、新しい情報を学ばなくてはならない・・・。」
そう思っているところで、目が覚めました。
この夢は、現在と過去の二つにまたがったシーンが出てきました。
過去にあった思いが、過去だけに終わらず現在も共通していることを暗示しているのでしょう。
その思いとは何か。
共通する感情に意識を向けて見ると、「焦り」です。
彼は思い当たることがありました。
彼が過去にいた団体では、そこで説かれた情報をいち早く学習し、マスターすることが指導的な立場に立つための条件だったのです。情報はどんどん分野が変わるので、その都度一所懸命に勉強して、少しでも人より優位に立とうと焦っていました。
そこで学ぶ情報は、人の心や生き方に関する情報であったにもかかわらず、次から次から新しく出てくるので、実践している暇がなかったといいます。
要するにいくら学んでも、単なる知識に過ぎなかったのです。
彼はそこでは、次々に出てくる新知識を学び、実践することなく、整理して話す。それだけの作業を繰り返していたのです。
いくら学んでも、人格の成長は伴わず、心は常に焦りに支配され、人より優れたい、より認められたいという欲望ばかりが膨らんでいたと言います。
その傾向は、今も続いているということを、夢は警告していました。
実践して体験し、自分自身の得たものとするのでなければ、何を学ぼうと心を成長させることはありません。
自分が本当につかみ取ったことではないからです。
人から聞いた知識はそれを自分で実践して本当かどうか確かめ、自分の気付きとなったときに、初めて血肉(ちにく)となり、心と人格の成長をもたらします。
夢で味わった焦りの奥には、学び方に対する考え違いも潜んでいると思いました。
こういう未熟な自分の姿は、決して見たくないネガティブな自分です。否定したい自分でもあります。だから人は、抑圧してそれに気がつかないようにします。
しかし、そうすればするほど、そのエネルギーは潜在意識に溜まって、無意識のうちに自分をあやつるようになるのです。
それに気づかせるために夢に出てくるのでしょう。
夢の中のネガティブな自分は、自分の影です。
影とは自分が否定したいと思う人格のネガティブな側面のことです。
中年以降は、影との対決が人格成長の重要な課題となります。
まず向き合って、「これは自分の影だ、そして自分自身だ」と受け入れることが必要です。
その時、影は、意識の奥に隠れて無意識に操るのをやめて、意識の一部となり、成長を手助けしてくれるエネルギーに転換するようです。
種村トランスパーソナル研究所(心理カウンセラー・種村修)
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