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回避性パーソナリティ障害から境界性へ(1)



回避性パーソナリティ障害の人が、何らかの事情で社会への適応がうまくいかなくなり、家庭に引きこもった場合には、それをきっかけに境界性パーソナリティ障害の状態に陥ることがあります。

ここでは、回避性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害の併発という問題を、取り上げたいと思います。

①傷つきを恐れる

これまで述べてきたように、基本的に回避性パーソナリティ障害を抱えている人は、「傷つくことに敏感すぎる」という際立った特徴があります。

自分が傷つくことを極端に恐れる」のです。

失敗や恥をかくことに非常に敏感」で、これを避けようとします。

自分に「逃れられない責任がかかる状況」を何とか避けようとします。

対人関係では、直接的な関わりである「面と向かい合う関係が苦手」です。ですがメールや電話などをつかっての間接的な関わりであれば、比較的自分を出すことができます。

基本的には、人と接するのをさけたがり、目立つのが嫌いで、「誰かの後ろに身をひそめようとする」行動パターンが多いといえます。

これは「自分に極度に自信がない」ことから生じる行動パターンです。

自分に自信がないので、他者から自分に関心が向けられること自体が苦痛を感じるという人もいます。もし関心がもたれ、自分の過去のことや内面で考えていることを知られたらどうしようと困惑し、人との接触を控えてしまいがちです。

ですので、自分から自己アピールをするということはめったにありません。その為に、せっかく長所や特技があっても、周りがそれに気がつかず、その才能を生かすことができないでいます。これはその人にとってはもちろんですが、周囲にとっても損失です。

②挫折体験の傷が残っている

このタイプの人は、これまでにも大きな失敗や挫折を経験していることが多いのですが、その時にできた心の傷がまだ癒えていません。だから、同じような局面を回避することが最優先になって、しり込みしてしまうのです。

このタイプの人の場合、些細な失敗や挫折をから、なけなしの自信を完全に失うと、それをきっかけに家に引きこもってしまうということがあります。失敗や挫折で味わった失意をはねのけ、リバウンドする力強さを持てないでいるのは、自信が欠如しているからです。

回避性パーソナリティ障害の人の生育過程を見ると、一般的には幼い時から褒められずに育てられたことが多いようです。実際には褒められたこともあると思うのですが、何らかの理由で「一度も褒められたことがなかった」と信じていることがあります。

あるいは母親が、自分の大変さから、ゆとりをもって子供に接する余裕がなかったのかもしれません。母親の心のゆとりは、夫から愛情を注がれることによって生まれますので、夫が妻を支えなかったのかもしれません。養育の中心は母親ですが、その母親がどういう気持ちで子育てできるかは、夫の妻への接し方によって天と地ほどの開きが生まれるます。

褒められて育ったのに、この障害を引き起こすこともあります。過保護に親にかわいがられてきた人でもこの障害に陥ることがあるのです。親から叱られたことがなく、極めて自己愛的に育った人が、社会に出るようになって周囲からきついことを言われ、自信を打ち砕かれるという場合です。

それまで「自信家で、自分が一番でないと気がすまないという自己愛性が高いタイプ」から、急激に「自信のない、人付き合いをさけるタイプ」に変化することがあります。自己愛性パーソナリティ障害の人が何らかの挫折をきっかけに、境界性や回避性のパーソナリティ障害を併発することもあるのです。

③ひきこもりへ

回避性パーソナリティ障害の人は、自分の能力以外にも、自分の外見や異性を惹きつける魅力の面でも劣等感を持っていることがよくあります。客観的には十分魅力的であったとしても自分では気がつかず、「醜い、魅力がない」「どうせ嫌われる」と思いこんでいて、異性を避けようとしがちです。

こうした回避性パーソナリティ障害の人が、実社会への適応がうまくいかなくなり、家庭に引きこもって、親や配偶者にベッタリと依存して暮らすようになると、それをきっかけに境界性パーソナリティ障害になっていくことがあるのです。

こういう場合、外でうまく生きてゆけない苛立ちや落胆を、親や配偶者にぶつけて八つ当たりをしたり、自傷行為や自殺未遂をして心配させることで、結果的に周囲を振り回します。これは境界性パーソナリティ障害の発症を告げるサインです。

親や配偶者が何とか立ちなおらせようと密着し、熱心に関われば関わるほど、本人の問題がいつの間にか周囲の問題であるかのようにすり替えられていきます。そして親や配偶者が悪いといわれるようになるのです。

問題を自分の問題として取り組むこと、受け止めることが、怖くてできない以上、親のせいや職場のせいや誰かのせいにしたい気持ちが湧いてくることは避け難いことです。そうして必死に自己防衛することで、自分が崩壊してしまうことを避けようとしているのです。そういう心の動きを、周囲は理解する努力をして受け入れる必要があると思います。

(注:本文中の「  」内は、すべて岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』から引用させていただいています)


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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。 リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

こうした極端に不安定な気持ちや言動の元にあるのは「相手に見捨てられるかもしれない」という不安です。しかも、その「不安」は、本人が思いこんでいるだけで、相手にしてみれば全く心当たりがない場合がほとんどです。そのため何を怒っているのか、見当がつきません。

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境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

①感情がコントロールできない

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。 もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。

②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害5…特徴(2)対人関係の不安定さ

①理想化とこき下ろし

境界性パーソナリティ障害の二番目の特徴は、人間関係が不安定で変動が激しいことです。
「理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係」というパターンがあるのです。


「理想化」というのは、「最高だ!」「こんな人に出遭えたのは初めて!」と感じて、相手を理想の人だと思いこむことです。


境界性パーソナリティ障害を持つ人は、自分を支えてくれ、愛情飢餓を癒してくれる人を常に求めています。ですから、これはという人物に巡りあえると、急速に相手に対する期待が高まります。そして「この人こそ、自分が求めていた人だ!」その思いが膨らむと、極度に理想化したり、万能な存在であるように思いこみやすいのです。

このタイプの人は、心の深いところで母親や父親の代理を相手に求めています。ですからその欲求を満たしてくれる人に出会うと、どんどん依存を深めていきます。

さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


もし恋人関係になったとしても、この関係は長続きしません。どこかで相手が支えきれなくなるからです。相手がその人のもつ過大な期待にしり込みしたり、あるいはもう飽き飽きしたという態度を取ると、境界性パーソナリティ障害の人は「見捨てられるのではないかという不安」に捉われます。
そこで必死にしがみつこうとしたり、相手の気を引く行動をとります。

それでもさらに相手が引くそぶりを見せると、激しい失望を感じて、「裏切られた!」と怒りを感じます。そうすると、今度は相手が攻撃の対象になりかねません。


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