スキップしてメイン コンテンツに移動

境界性パーソナリティ障害の人を支えるために③ 目的と枠組の明確化



(前回に続いて、境界性パーソナリティ障害の人を支える人々が、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回ご紹介するのは「目的と枠組みを明確にする」ということです。これは家族というより、カウンセラーなどの第三者が関わり場合に必要な原則です。)

目的と枠組みを明確にする

境界性パーソナリティ障害の人をささえるには、何よりも文字通り「支える気持ち」が大切です。「支える」ことを「サポート」と呼びますが、日本語では「支持」とも言います。これが前回紹介したSETS(支持)に当たります。

ここで「支持(S」というのは、「相手を気づかっているという個人的な気持ちを表明する」ことです。例えば、「あなたがどんな気持ちでいるのか、とても心配しています」というような表現です。

大切なことは、話し手自身の気持ちで、自分が心から力になりたいと思っていることを伝える内容」を語ることなのです。

さてその上で、専門家などの第三者が関わる時には、二つのことが重要になります。

その一つは「目的を明確にする」ことです。

もう一つは、支援で関わる際の条件やしてはいけないことなどの「枠組みを決めておく」ことです。

この二つは、支援者も守りながら、長く支援を続けていく上で必要になります。

①目的を明確にする

専門家がカウンセリングをする時は、何を目的にカウンセリングを続けていくのかを明確にしなければなりません。

単に優しさだけで「明確な目的」を決めずに接していくことは、本人の依存心を強くさせてしまう恐れがあります。これは本人の自立能力を弱めるので、かえって危険だといわれています。

目指すべき目的には、通常、次のようなものがあります。

・当面の困っている問題や症状を改善する
・自立能力や適応能力を高める
・自分を見つめなおして、根本的な解決を図る

途中で初期の目的が変わっていくことがありますが、その場合は、そこで新たな目標設定をし直せばよいのです。

目的が明確だと、取り組みの気持ちがお互いに引き締まってくるので、カウンセリングの効果が高くなります。

しかし、どんな目的を追求するにしても、あくまでも主体は本人です。

カウンセラーは本人の心の成長をサポートすることで、本人が潜在的に持っている改善する力を引きだすお手伝いをしますが、その力は本人がよくなりたいと思う強い意志があってこそ発揮できるものです。

②枠組みを明確にする

ここで「枠組み」というのは、カウンセリングをどのくらいの頻度で、どこの場所で、どのぐらいの時間行い、その際の料金はいくらかかるかを決めることです。

また、電話は何時から何時の間であればかけていいのか。その場合の料金はいくらかも決めます。メールに関しても同様です。

枠組みとして料金設定をしておくのは、金銭的な枠組みが無制限の依存を食い止めてくれるからです。その制約がないと、依存心がどこまでも膨らみ、カウンセラーの生活も破壊されてしまいかねません。そうすると結局は長くサポートすることができなくなります。

私の場合は、基本は、カウンセリングの場所は私の千葉県我孫子市にあるカウンセリングルームで行い、その場合1時間6000円です。ただし、カウンセリング講座の申込者には3時間、1万円でカウンセリング込みの授業を提供しています。

なお生活保護を受けている方には、料金を半額にしていますが、無料では行っていません。

カウンセリングの場所も、ご要望があれば遠方への出張も行っています。

また、電話カウンセリングは10分間1000円、1時間6000円です。
初回に限り最初の30分間は無料としています。これはご本人がカウンセリングを受けるかどうかの判断をしていただくためです。

メールの場合は1か月6000円で回数に制限はありません。返信は、原則翌日ないしは翌々日に行います。

さて、一般的には、自殺未遂が生じた場合には、入院を勧めるということも約束しておいた方が良いようです。幻聴が伴う場合などもあるので、入院しないと危険なことがあります。

境界性パーソナリティの人の支援に当たっては、耳障りの良いことだけをいうのは、むしろ逆効果です。最悪の場合については、きちんとくぎを刺しておくことも必要です。それによって本人を守れるからです。そのあたりの事情について、医学博士の岡田尊司氏は次のように説明しています。

このタイプの人の頭の中では、アンビバレント(注:相矛盾することをさす言葉で両価的と訳される)な考えが湧き起りがちである。いいことだけを強調すると、心の中に反対の考えが生じたり、期待が裏切られたりしたとき、反動が強く現われてしまいやすい。悪い場合についても明言することによって、そうした事態を防ぎやすくなる。

カウンセラーは以上のような基本的な対応をしますので、それを知った上で必要に応じて活用されることをお勧めします。

<ご案内>
種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
対面のカウンセリング以外にも、電話カウンセリングやメールでのカウンセリングも受け付けています。遠慮なくご利用ください。ご連絡をお待ちしています。
電話09080518198
メールアドレスtanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは千葉県のJR常磐線・我孫子駅南口から徒歩10分の場所にございます。

(参考図書)岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』幻冬舎新書
『境界性人格障害のすべて』ジェロルド・J・クライスマン、ハル・ストラウス共著 VOICE


コメント

このブログの人気の投稿

境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。 リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

こうした極端に不安定な気持ちや言動の元にあるのは「相手に見捨てられるかもしれない」という不安です。しかも、その「不安」は、本人が思いこんでいるだけで、相手にしてみれば全く心当たりがない場合がほとんどです。そのため何を怒っているのか、見当がつきません。

境界性パーソナリティ障害の人は、大変深刻な「見捨てられ不安」をもっているのです。そのために、ささいな…

境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

①感情がコントロールできない

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。 もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。

②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害5…特徴(2)対人関係の不安定さ

①理想化とこき下ろし

境界性パーソナリティ障害の二番目の特徴は、人間関係が不安定で変動が激しいことです。
「理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係」というパターンがあるのです。


理想化」というのは、「最高だ!」「こんな人に出遭えたのは初めて!」と感じて、相手を理想の人だと思いこむことです。


境界性パーソナリティ障害を持つ人は、自分を支えてくれ、愛情飢餓を癒してくれる人を常に求めています。ですから、これはという人物に巡りあえると、急速に相手に対する期待が高まります。そして「この人こそ、自分が求めていた人だ!」その思いが膨らむと、極度に理想化したり、万能な存在であるように思いこみやすいのです。

このタイプの人は、心の深いところで母親や父親の代理を相手に求めています。ですからその欲求を満たしてくれる人に出会うと、どんどん依存を深めていきます。

さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


もし恋人関係になったとしても、この関係は長続きしません。どこかで相手が支えきれなくなるからです。相手がその人のもつ過大な期待にしり込みしたり、あるいはもう飽き飽きしたという態度を取ると、境界性パーソナリティ障害の人は「見捨てられるのではないかという不安」に捉われます。
そこで必死にしがみつこうとしたり、相手の気を引く行動をとります。

それでもさらに相手が引くそぶりを見せると、激しい失望を感じて、「裏切られた!」と怒りを感じます。そうすると、今度は相手が攻撃の対象になりかねません。


些細なきっかけで、その人の何らかの要求が満たされないと、評価が180度逆転して、罵詈雑言を浴びせることもありがちです。そして「最低!」「信じて損した」「私の時間を返してよ」という具合に、激しい言葉を浴びせるのです。言葉だけでなく、行為で迷惑をかけることもあり、相手は翻弄されていくことになります。
②アンビバレント(両価的)な感情
このタイプの人を理解する鍵は、「アンビバレント(両価的)」な感情にあります。