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境界性パーソナリティ障害を支えるために⑫ 認証という戦略



(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介しています。今回紹介するのはアメリカのリネハン女史が開発した境界性パーソナリティ障害の人を支える基本的な方法の一つです。「認証戦略」と呼ばれています。やや専門的な支援の方法かもしれませんが、非常に重要なことを教えてくれています。)

1.ピンチをチャンスに変える受け止め方

境界性パーソナリティ障害を治療する方法として国際的に評価が確立している治療法に、「弁証法的行動療法」があります。これはアメリカのリネハン博士が開発したものですが、自殺防止の方法としても有名で、優れた成果を上げています。

リネハン博士は、自分がカウンセリングしている姿を第三者の専門家に見てもらい、どういう関わり方が効果があるのか、どういうコミュニケーションが治療的かを、実証的に根気強く研究しました。その結果、「認証」という関わり方こそ、改善への鍵を握っていることに気が付きました。

認証」というのは、「ピンチをチャンスに変える受け止め方」です。言い換えると、「どんな悪いことや困ったことにも、必ずよい面や学ぶ点があるという発想で物事を受け止める態度」です。それを「認証戦略」と呼びます。

この世界に本当に悪いことはありません。私たちを真に害するものはないと思います。一見悪いと見えることも必ずメリットがあり、意味があるからです。その意味を見出した時に、それは成長への糧となります。それがあったおかげで、いっそう成長できたという感謝へとつながります。

その考え方を持っていると、ピンチは成長への機会と受け取ることができるようになります。成功へのばねになるのです。こういう考え方は、成功している人や困難を克服してきた人が、自然に身につけていることが多いように思います。

2.二分法的な認知を修正する

境界性パーソナリティ障害の人は、ほとんどが二分法的な認知をしています。認知というのは、物事の受け止め方ということですが、それが「善いことか悪いことか」「完璧か失敗か」「敵か味方か」と完全にどちらかに色分けし二分して受け止めてしまうのです。要するに黒か白かしかなく、灰色という中間がないのです。

この「二分法的な認知」をすると、些細な悪い点があっただけで、すべて台無しになったような気がします。ダメな点や不満な点にばかり目がいって、自分自身や周りの人や、学業の成績や仕事の出来栄えなどを裁きます。つまり人や成果や出来事に「不認証」を与えるのです。これは自分も苦しいだけでなく、周囲の人も苦しめます。

この二分法的な認知をする人は、うつ病にもかかりやすいことが知られています。実際、境界性パーソナリティ障害の人はうつ病になりやすく、自殺率も高いのです。

なぜ二分法的な認知をするのかというと、育った環境の影響を見逃せません。周囲の人が決して奥井はなくとも、何かトラブルが起きた時に、本人に「認証」を与えるよりも、「不認証」を与えてしまっていたのです。

トラブルが起きると、冷静に対応してそれを乗り越えるのではなくて、トラブルは悪いこと、それを起こしたお前は悪い人間で、罰を受けなければならない、お前はダメなやつだと、いわば裁かれて生きてきたように感じているのです。それで「二分法的な認知」と「自己否定」を心に刻み込んで成長してしまったのです。

こうして身につけた「二分法的な認知」を変えるには、周囲が、それとは逆の接し方を、繰り返しすることが必要になります。つまり境界性パーソナリティ障害から回復させるには、次のような一貫した「認証」の姿勢が必要なのです。

どんな悪いことにもプラスの意味があり、それは必要かつ必然性を持った行為であって、そこから何かを学んでいけるのだ、成長するきっかけにすることができるのだ」ということを、頭で理解すると同時に、「心の底から実感し、身につけていく」ことが必要なのです。

3.言葉が重要である

境界性パーソナリティ障害の人はよく全否定したり、悪い点に過剰に反応する受け止め方をしますので、これを周囲の人がさりげなく修正してあげてください。全否定したことの中にもプラスの面があることに気がつくように、さりげなく修正する言葉を使うのです。そうした言葉が重要です。

「こんな最悪の時でも、~という良い面もあるんじゃないかな」
「こんな時に、よくそんなふうに考えられたね」
「それを体験したことは、きっと意味があるはずだよ」
「それがわかっただけでも、すごいじゃないか」
「転んでもただでは起きないということだね」
「良く耐えてきたよね、それだけでもすごいよね」

周囲の人は、本人も気づいていないような良い面やプラスの意味を見つけだす名人になり、良き側面に積極的に反応する必要があります。そして言葉で表現することを習慣にするのです。それは周囲の人自身が自分が持っている「二分法的な認知」を修正することにもつながります。

境界性パーソナリティ障害の人が育った環境では、通常は「認証」とは逆の対応がなされています。つい悪い点やダメな点を発見する名人になってしまっており、悪い点に過剰に反応しがちなのです。せっかく良い芽が出てきても、それに目が向かずに、「ちっとも変っていないな」「進歩しないな」と、一言で切り捨ててしまうことが多く、本人を心理的に追い詰めがちです。せっかく芽吹いた新芽に、霜をかけるようなものです。しかもそれを悪いことと知らずに行うので、いつまでも変わらないのです。

「認証」という戦略を、人生の基本姿勢として持つ努力を、是非してください。すると苦しみを乗り越える過程で、家庭が明るく育むものへと変容してゆくと思います。

なお、母親が子育ての責任を一身に負って責められがちですが、母親が愛情深く余裕をもって子育てできるには、夫の支援が欠かせません。夫が妻を物理的にも精神的にねぎらい、妻が安心して子育てができる環境を作らなければ、とても母親一人で子育てはできません。子供に問題がいきたときは、夫婦はお互いに責任があることを理解して、二人が協力して対応することが何よりも大切であると思います。そうすることで、子どもが問題を発症したことをきっかけに、夫婦のきずなが深まります。こういう考え方が認証戦略なのです。


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種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
対面のカウンセリング以外にも、電話カウンセリングやメールでのカウンセリングも受け付けています。遠慮なくご利用ください。ご連絡をお待ちしています。
電話09080518198
メールアドレスtanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは千葉県のJR常磐線・我孫子駅南口から徒歩10分の場所にございます。

(参考書)

この項は特に『境界性パーソナリティ障害』岡田尊司著(幻冬舎新書)の恩恵を受けています。こうした「認証」に通じる物事のプラス面を見る思想は「光明思想」でも説かれており、エマソンや谷口雅春氏が有名です。光明思想ではありませんが、心理学のユングや河合隼雄氏の思想は、この認証の側面を濃厚に持っています。現象として現れた悪を単なる悪と見ない、そこに別の意味を見出すのは、河合隼雄氏の著作に一貫している姿勢だと思います。

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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。 リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

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境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

①感情がコントロールできない

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。 もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。

②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害5…特徴(2)対人関係の不安定さ

①理想化とこき下ろし

境界性パーソナリティ障害の二番目の特徴は、人間関係が不安定で変動が激しいことです。
「理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係」というパターンがあるのです。


「理想化」というのは、「最高だ!」「こんな人に出遭えたのは初めて!」と感じて、相手を理想の人だと思いこむことです。


境界性パーソナリティ障害を持つ人は、自分を支えてくれ、愛情飢餓を癒してくれる人を常に求めています。ですから、これはという人物に巡りあえると、急速に相手に対する期待が高まります。そして「この人こそ、自分が求めていた人だ!」その思いが膨らむと、極度に理想化したり、万能な存在であるように思いこみやすいのです。

このタイプの人は、心の深いところで母親や父親の代理を相手に求めています。ですからその欲求を満たしてくれる人に出会うと、どんどん依存を深めていきます。

さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


もし恋人関係になったとしても、この関係は長続きしません。どこかで相手が支えきれなくなるからです。相手がその人のもつ過大な期待にしり込みしたり、あるいはもう飽き飽きしたという態度を取ると、境界性パーソナリティ障害の人は「見捨てられるのではないかという不安」に捉われます。
そこで必死にしがみつこうとしたり、相手の気を引く行動をとります。

それでもさらに相手が引くそぶりを見せると、激しい失望を感じて、「裏切られた!」と怒りを感じます。そうすると、今度は相手が攻撃の対象になりかねません。


些細なきっかけで、その人の何らかの要求が満たされないと、評価が180度逆転して、罵詈雑言を浴びせることもありがちです。そして「最低!」「信じて損した」「私の時間を返してよ」という具合に、激しい言葉を浴びせるのです。言葉だけでなく、行為で迷惑をかけることもあり、相手は翻弄されていくことになります。
②アンビバレント(両価的)な感情
このタイプの人を理解する鍵は、「アンビバレント(両価的)」な感情にあります。