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境界性パーソナリティ障害を支えるために⑪ 支持・共感・真実


(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回は基本的なコミュニケーションの方法である「支持・共感・真実」です。)

1.コミュニケーションの3つの基本

これから紹介するのは、危機的な状況にある境界性パーソナリティ障害の人を支援するためにアメリカの医療機関で開発されたコミュニケーションの方法です。それは3つの基本からなっている体系で、支持(サポート)、共感(エンパシー)、真実(トルース)で構成されています。この頭文字をとって「SET」と言われます。

支持(サポート)」は、支援する人が、自分から力になりたいと思っていることを伝えることです。本人を気遣っているという支援者の個人的な気持ちを表現します。

共感(エンパシー)」とは、本人の混乱している気持ちをありのままに受け入れて理解しようとする姿勢です。かわいそうという同情ではありません。相手の気持ちをありのままに理解しようという姿勢です。

真実(トルース)」は、最終的な責任は本人しか取れないのであり、どんなに支援する側が力になろうという気持ちがあっても、他人が肩代わりして本人の人生を生きることはできないということを伝えることです。

この「真実」では「今そこにある問題を認識して、その解決に向けて具体的に何がなされるべきかを述べる」ことが中心になります。

「真実」には、支援する側が本人によって強いられている状況を、決して批判がましくない表現で、客観的に伝えることが必要です。そして本人が置かれている状況を、非難する気持ちを悲観的な思いをもたずに、冷静に客観的に伝えます。そして、その時に欠かせないのは、「それで、あなたはどうしたいの?」「どうしようと思うのかな?」という本人の主体性を重んじる問いかけです。

2.3つの要素が含まれる会話が必要

境界性パーソナリティ障害の人とのコミュニケーションには、この3つの要素が全部含まれていることが必要です。どれかが欠けていると、問題が起きます。逆にいうと、本人とのコミュニケーションがうまくいかない時は、3つの要素の何が欠けていたのかを点検すると、コミュニケーションの改善の方針が見えるのです。

「支持」の要素が十分に伝わっていない時は、「私のことを心配していない」、あるいは「私との関わり合いを避けている」と言って非難してきます。
本人が「私のことなんかどうでもいいのね!」と相手を責めるときは、「支持」(サポート)の気持ちが十分に伝わっていないことを教えています。


共感」を伝えることができていない場合は、「あなたには私の気持ちは分からない」という反応が返ってきます。この時、「自分の苦しみが理解されていない」という気持ちを本人は感じているのです。
この時には、分かってもらえないことをコミュニケーションの拒絶の理由として突き付けてきます。自分の苦しみが理解できない人間などとは、まともに取り合う必要がないと見なすのです。

「真実」の部分が明確に伝わらない時は、危険な状況が生まれてきます。
境界性パーソナリティ障害の人は、相手の容認や受容を自分にとって最も都合の良い方向に解釈をするという傾向を持っています。
具体的には、それは「自分にかかる責任を相手が引き受けてくれる証」であるとか、そうでない時は、「自分の考え方、感じ方が全面的に受け入れられて支持されている」という理解のしかたをします。
境界性パーソナリティ障害の人は自分と人の境界がなく相手と融合してしまおうというコミュニケーションをとります。そのために親しくなるほど非現実的で一方的な要求をするようになり、その要求の重さに耐えられなくなると、関係が破たんしていきます。
だからこそ、「まっすぐに向き合う」姿勢をもって、「真実」を伝えていかないと、本人は、相手にしがみつこうとする態度をいつまでもとり続けてしまいます。

この「真実」は最終的には、本人に、自分に起こる出来事や反応は、自分がしたことに基づいているということを理解してもらうために必要です。それがなくて、いつまでも相手を責めるばかりで、責任が自分にあることが理解できないと、決して心が成長し、豊かな人間関係を築くことができなくなってしまいます。

<ご案内>
種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
対面のカウンセリング以外にも、電話カウンセリングやメールでのカウンセリングも受け付けています。遠慮なくご利用ください。ご連絡をお待ちしています。
電話09080518198
メールアドレスtanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは千葉県のJR常磐線・我孫子駅南口から徒歩10分の場所にございます。


(参考図書)

『境界性人格障害のすべて』ジェロルド・J・クライスマン&ハル・ストラウス著 VOICE

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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

こうした極端に不安定な気持ちや言動の元にあるのは「相手に見捨てられるかもしれない」という不安です。しかも、その「不安」は、本人が思いこんでいるだけで、相手にしてみれば全く心当たりがない場合がほとんどです。そのため何を怒っているのか、見当がつきません。

境界性パーソナリティ障害の人は、大変深刻な「見捨てられ不安」をもっているのです。そのために、ささいな…

境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

①感情がコントロールできない

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。

②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害2…主な特徴と種類

①極端な気分、感情のブレが特徴

境界性パーソナリティ障害を抱えた子どもやパートナーと一緒に生活すると、次のような経験をすることがあります。
・何のことはないごく些細な言葉で、さっきまで楽しくしていたのが、急に怒りだして手がつけられなくなる。
・少し言い過ぎた言葉、その一言でむきになり、家を飛び出してしまう。時には自殺企図へと走ったりする。
・一言注意されると、もう怒りが爆発して、手が付けられないほど暴れまる。
・冗談で言った言葉にすら、深く傷つき思いつめてふさぎ込む。
・何気ない動作が、愛情の希薄さだと責められて、唖然としてショックを受ける。
子どもやパートナーがこうした反応を繰り返すと、家族はしだいに腫れ物に触るように、顔色を常に窺いながら、機嫌を損ねるのを恐れながら暮らすようになっていきがちです。薄氷を踏むような危うさ――。家族は言いたいことを言えず、常に自分を抑えて暮らします。
こうして家族はその人に支配されているような状態に陥り、息苦しさを感じます。もちろん、ご本人にはそうした意図はありません。ご本人はどうしようもない感情・気分のブレに苦しんでいるのですが、結果的には周囲を支配しているのと変わらない状況が生まれがちです。

境界性パーソナリティ障害は、感情や気分、行動の変化があまりにも激しいという特徴があります。しかも変動の幅が大きすぎ、まったく正反対の方向へぶれたりします。
飛行機の操縦かんを動かし過ぎると、機体は激しく振動し、上下にもブレを繰り返すといいますが、同じことが心の操縦かんで起きているのです。
アメリカで作成された「DSM―Ⅳ 精神疾患の分類と診断の手引き」を見ると、境界性パーソナリティ障害の診断基準として次のような項目があります。

「顕著な気分反応性による感情不安定性」・・・(例)通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い深い気分、いらだたしさ、または不安。
「不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難」・・・(例)しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す。