スキップしてメイン コンテンツに移動

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑨ 自殺企図への対処



(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回ご紹介するのは深刻な問題である「自殺企図への対処の仕方」です。)

1.自殺企図への対処の仕方①

境界性パーソナリティ障害は自殺したいという気持ち(自殺企図)に苦しみ、自傷行為も頻発しがちなので、支援する側が精神的にダメージを受けやすい障害です。

この自殺企図に対しては二つの面からの対応が有効だと言われています。

一つ目の方針は、限度を超えた行動が見られて、現に自殺の危険性を感じたときは、大目に見ずに、医療機関に入院するという措置を取ることを決めておくことです。そして実際にそうなった時に、すぐに入院手続きを取ります。こうした行動制限があった方が、本人もコントロールしやすいのです。

入院すると家族から離れて自分を見つめる時間が取れます。周りのせいにしていた問題を、自分の責任として受け入れるきっかけにもなります。ですから、入院は決して悪い選択ではありません。
入院によって自分の生活や周囲の環境を新しい目で見なおし、気持ちを立て直すことも少なくありません。

ただし、家族の面会は必要です。家族と面会を重ねながら、同時に一人で見つめなおす時間もあることで、家族との関係を見直せるチャンスになります。

ただし、友人たちの面会は、時にはもっと落ち込むきっかけになることがあります。昔の自分や友人の現在と比較して、今の自分のみじめさに、うつ状態が深まることがあるからです。ですので、家族はしっかりと注意して見守ってあげてください。

2.自殺企図への対処の仕方②

もう一つの方針は、本人の「行動の奥にある思いを汲む」ことです。

自殺企図以外にも、自傷行為、薬物の乱用、万引き、性的逸脱などの「行動化」と言われる逸脱行為は、この障害に特徴的です。もちろん、本人にとって極めて危険です。

しかし、そうした行為は、本人の「自分を分かってほしい、自分に向き合ってほしい」という「必死のアピール」である側面を持っています。

ですから、問題に蓋(ふた)をして、いたずらに本人の機嫌を取ろうとするのではなく、まして見放すのではなく、たとえ苦しくても本人がこだわっている問題に一緒に向き合う姿勢をとってあげてほしいのです。

そうまでして訴えざるを得ない苦しみを持っているということを受け入れ、その苦しい気持ちを理解し、一緒に向き合っていこうとするときに、心のつながりが深まります。

3.間違った対応への注意

この両面からの対策は、後者の「行動の奥にある思いを汲む」は受容的な対応ですが、前者の冷静な「行動制限」は本人を守るために必要な対処だけをするシンプルな対応です。特に状態が悪い時は、このシンプルな対応が大切です。行動が制限できて、初めて受容的な対応ができるのです。

例えば、自傷行為をした時に、周囲がおろおろして心配でたまらないという態度を示したり、何とかやめさせようと懇願して大騒ぎをしたりすると、かえってよくありません。なぜなら、こういう行動をすると、周囲が自分を大切にしかまってもらえると、間違った「学習」をしてしまうからです。

こういう時は、思いやりはあるが、冷静で穏やかな態度を維持することで、そうした間違った受け止め方(学習)をさせないことが必要です。

もう一つ避けるべきなのは、理屈で説得しようとすることです。境界性パーソナリティ障害の人は、極端な結論に走って自分の行動を正当化しがちですし、非常に議論が得意でもあります。ですから、議論は逆効果です。

それよりも、十分に本人の言い分を聞いたうえで、「自殺の危険性があるのにあなたを一人で自宅に置いておけないでしょう」と言って、きっぱりと入院などの対処したほうがいいのです。まず危険性を減らして、本人が冷静になってから、その上で受容的な傾聴をすることが、効果的な対処といえるでしょう。

<ご案内>
種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
対面のカウンセリング以外にも、電話カウンセリングやメールでのカウンセリングも受け付けています。遠慮なくご利用ください。ご連絡をお待ちしています。
電話09080518198
メールアドレスtanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは千葉県のJR常磐線・我孫子駅南口から徒歩10分の場所にございます。

(参考図書)

『境界性パーソナリティ障害』岡田尊司著 幻冬舎新書

コメント

このブログの人気の投稿

境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

こうした極端に不安定な気持ちや言動の元にあるのは「相手に見捨てられるかもしれない」という不安です。しかも、その「不安」は、本人が思いこんでいるだけで、相手にしてみれば全く心当たりがない場合がほとんどです。そのため何を怒っているのか、見当がつきません。

境界性パーソナリティ障害の人は、大変深刻な「見捨てられ不安」をもっているのです。そのために、ささいな…

境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

①感情がコントロールできない

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。

②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害2…主な特徴と種類

①極端な気分、感情のブレが特徴

境界性パーソナリティ障害を抱えた子どもやパートナーと一緒に生活すると、次のような経験をすることがあります。
・何のことはないごく些細な言葉で、さっきまで楽しくしていたのが、急に怒りだして手がつけられなくなる。
・少し言い過ぎた言葉、その一言でむきになり、家を飛び出してしまう。時には自殺企図へと走ったりする。
・一言注意されると、もう怒りが爆発して、手が付けられないほど暴れまる。
・冗談で言った言葉にすら、深く傷つき思いつめてふさぎ込む。
・何気ない動作が、愛情の希薄さだと責められて、唖然としてショックを受ける。
子どもやパートナーがこうした反応を繰り返すと、家族はしだいに腫れ物に触るように、顔色を常に窺いながら、機嫌を損ねるのを恐れながら暮らすようになっていきがちです。薄氷を踏むような危うさ――。家族は言いたいことを言えず、常に自分を抑えて暮らします。
こうして家族はその人に支配されているような状態に陥り、息苦しさを感じます。もちろん、ご本人にはそうした意図はありません。ご本人はどうしようもない感情・気分のブレに苦しんでいるのですが、結果的には周囲を支配しているのと変わらない状況が生まれがちです。

境界性パーソナリティ障害は、感情や気分、行動の変化があまりにも激しいという特徴があります。しかも変動の幅が大きすぎ、まったく正反対の方向へぶれたりします。
飛行機の操縦かんを動かし過ぎると、機体は激しく振動し、上下にもブレを繰り返すといいますが、同じことが心の操縦かんで起きているのです。
アメリカで作成された「DSM―Ⅳ 精神疾患の分類と診断の手引き」を見ると、境界性パーソナリティ障害の診断基準として次のような項目があります。

「顕著な気分反応性による感情不安定性」・・・(例)通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い深い気分、いらだたしさ、または不安。
「不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難」・・・(例)しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す。