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境界性パーソナリティ障害を支えるために⑧ 本音を汲み取る



(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回ご紹介するのは親子の関係を改善するうえで最も重要な「言葉の奥にある本音を汲み取る」です。)

1.言葉の奥にある本音を汲み取る

境界性パーソナリティ障害の人の両親は、往々にして共感能力が不足していることがあります。つまり、子どもの言葉の奥にある本音を感じ取ることが苦手なのです。

例えば、子どもが母親に対して、

「お前なんかに、近寄ってほしくない!」
「顔も見たくない!」

と言った時、
罵声を浴びせられた母親は、子どもに関わることに自信を無くしてしまい、

「あの子が近寄ってほしくないと言ったから、自分にしてやれることはない」

と嘆いて、関わりから手を引いてしまうことがあります。

子供は言葉とは裏腹に、本当は母親に関わってほしいのです。
ところが自分の本音を汲み取ってもらえないことで、子供はさらに怒りを膨れ上がらせます。

一方母親はというと、さらに自信を無くし、子どもへのネガティブな感情を強め、子どもとの関わりから遠ざかります。

その結果、子どもの心には見捨てられ不安と愛情飢餓が、ますます強化されてしまいます。
全くの悪循環です。

気持ちを汲むことが苦手な人は、言葉を額面通りにしか受け取らない傾向があります。そして額面の言葉に傷ついていき、子どもの本音の期待に気がつきません。わが子がどんな思いで親に認めてもらおうと頑張っているか、それが結局、期待外れな結果に終わったことで傷ついているか、感じ取るのが難しいのです。

2.自分の感情に視線が向かう

親が子供の本音の感情に気がつけないとき、その理由は、「自分の感情の方に視線が向く」からです。医学博士の岡田尊司氏は、次のように指摘しています。

本人の痛みに目を向けているように見えるときも、実際は、それ以上に、自分自身の痛みや失意の方に囚われていることが多い。痛々しい姿を見せられておろおろするのも、自分自身の心の痛みに耐えられないからである。苦しんでいるわが子の痛みよりも、そうした姿を見せられることによって、自分が苦しめられ、心を痛めつけられることの方が耐えがたく感じるのである。心のどこかで、親を苦しめるわが子に、落胆と非難がましい気持ちを抱き、困りもの扱いしている。」

渦中にいる方には厳しい指摘だと思いますが、ありのままに事実を事実として受け止め、受け入れることで、意外に改善の方向へ動きだすものです。「たしかのそういう思いがあるな」と認めると、その思いが縮小して無害化していくのです。

さて、親のもつこうした本音の感情を、子どもは敏感に感じ取っています。
本音では子供は親に助けてほしいと思っているし、親も本心では子供を助けたい。
でも、心の本音を感じ取ることが難しくて、お互いが傷つき、その結果、心が離れていくのです。

どうすればいいのでしょうか。わが子の気持ちを汲み取るということに、視線を向けることしかありません。先ず必要なことを、岡田尊司氏は次のようにアドバイスしています。

本人が口先で、どういう言葉を使おうと、それに囚われることなく、心の目を、その奥底にある気持ちに向けるのである。こちらの都合や期待や気持ちではなく、本人の傷ついた気持ちを受け止めようとするのである。」

人の心は、素直に心を開いて、相手の気持ちを感じ取ろうとすれば、ある程度まで感じ取ることはできます。これは訓練の効果があります。

ただし、現実問題として、今までできなかった人は、急にしようとしてもどうしてよいかわかりません。その為に、心理療法ではいくつかの手法が開発されています。それは学んで習得することができる心の技術です。

なお、子供が境界性パーソナリティ障害を持っている場合、往々にして親も幼少期に情緒的もしくは肉体的な虐待を受けて育っており、心に深い傷を負っていることが少なくありません。

この場合は、どのように子供に愛情を注ぎ、心を満たせばいいのかが分からなかったり、無意識に子どもを拒絶していることもあります。

そういう場合は、まず親自身が癒される必要があります。そういう方は是非カウンセリングの機会を持って頂きたいと思います。

<ご案内>
種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
対面のカウンセリング以外にも、電話カウンセリングやメールでのカウンセリングも受け付けています。遠慮なくご利用ください。ご連絡をお待ちしています。
電話09080518198
メールアドレスtanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは千葉県のJR常磐線・我孫子駅南口から徒歩10分の場所にございます。


(参考図書)

『境界性パーソナリティ障害』岡田尊司著 幻冬舎新書

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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
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2.見捨てられ不安と愛情飢餓

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境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

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境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
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②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害2…主な特徴と種類

①極端な気分、感情のブレが特徴

境界性パーソナリティ障害を抱えた子どもやパートナーと一緒に生活すると、次のような経験をすることがあります。
・何のことはないごく些細な言葉で、さっきまで楽しくしていたのが、急に怒りだして手がつけられなくなる。
・少し言い過ぎた言葉、その一言でむきになり、家を飛び出してしまう。時には自殺企図へと走ったりする。
・一言注意されると、もう怒りが爆発して、手が付けられないほど暴れまる。
・冗談で言った言葉にすら、深く傷つき思いつめてふさぎ込む。
・何気ない動作が、愛情の希薄さだと責められて、唖然としてショックを受ける。
子どもやパートナーがこうした反応を繰り返すと、家族はしだいに腫れ物に触るように、顔色を常に窺いながら、機嫌を損ねるのを恐れながら暮らすようになっていきがちです。薄氷を踏むような危うさ――。家族は言いたいことを言えず、常に自分を抑えて暮らします。
こうして家族はその人に支配されているような状態に陥り、息苦しさを感じます。もちろん、ご本人にはそうした意図はありません。ご本人はどうしようもない感情・気分のブレに苦しんでいるのですが、結果的には周囲を支配しているのと変わらない状況が生まれがちです。

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飛行機の操縦かんを動かし過ぎると、機体は激しく振動し、上下にもブレを繰り返すといいますが、同じことが心の操縦かんで起きているのです。
アメリカで作成された「DSM―Ⅳ 精神疾患の分類と診断の手引き」を見ると、境界性パーソナリティ障害の診断基準として次のような項目があります。

「顕著な気分反応性による感情不安定性」・・・(例)通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い深い気分、いらだたしさ、または不安。
「不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難」・・・(例)しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す。