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境界性パーソナリティ障害18・・・その原因




 1.愛着障害


 境界性パーソナリティ障害は現在急増しているのですが、その原因は環境要因、特に育った家庭環境によるところが最も多く、次いで子供の頃のいじめなど傷ついた経験が影を落としています。それに比べると遺伝的要因はやや小さいと思われますが、無視はできないといわれています。結局、「境界性パーソナリティ障害になりやすい傾向を持った人が、不利な環境に置かれた時に、発症しやすくなる」と考えられています。


境界性パーソナリティ障害の人の親も境界性パーソナリティ障害であるというケースは少なくありません。この障害は世代間伝達しやすいのです。


 環境要因では家庭環境が一番重要ですが、まず考えられるのは、乳幼児期に母親と安定した関係が築けなかったことです。母親と子どもとの情緒的な信頼のきずなを心理学では「愛着といいますが、愛着関係が損なわれると、基本的信頼感基本的安心感が持てず、情緒が不安定なパーソナリティにやすいことが知られています。


ごく幼い時に育児放棄されネグレクトを経験すると、子供は周囲に無関心で誰にもなつかず愛着を示さないタイプの愛着障害を示します。

しかし、もう少し年齢が上がってから母親の愛情を喪失した子供は、しばしば誰かれかまわず懐(なつ)くというタイプの愛着障害を示すようになります。この時、なつく対象となる人がいなくなると、割にあっさりと切り替えて、すぐにまた別のかまってくれる人になつきます。このパターンを繰り返す傾向が見られます。


これは境界性パーソナリティ障害の人かよく示す愛着のパターンと、非常によく似ています。それは、「振り向いてくれる人」には、ほとんど見境なく、しがみついていこうとする。しかし、その人がいなくなれば、またすぐ別に、「依存する相手」を探すというものです。


境界性パーソナリティ障害の人は、深刻な愛情飢餓感を抱いていますが、その根っこには愛着障害があると言われています。幼少期に親に愛されなかったという愛情飢餓感や、見捨てられ不安の経験が心の傷として長く残っていて、それが癒されないのです。



2.母子分離にまつわる障害


 境界性パーソナリティ障害の人は、一つの共通した生育上の経験を持っていると言われています。それは「母親のひざ元から最初の自立を成し遂げていく時期」(1歳~3歳)に、「愛情や関心が適切に与えられず」、親から分離し自立してゆく過程を「うまく卒業できなかった」という特徴です。


 1歳から3歳は、乳幼児が母子一体感の感覚から抜け出して、母親から離れて一人でいられるようになる親離れの重要な時期です。特に2歳ごろから、歩行ができるようになると母親から離れていこうとする反面、母親がいなくなることへの不安(分離不安)がつのり、過度に母親に密着する時期(再接近期)を通ります。

この間に母親から離れても、常に変わらない母親の暖かいイメージが自分の中に確信できるようになると、安心できて、母親離れができます。この安心できる母親のイメージが心の中に確立することを、心理学では「対象恒常性の確立」といいますが、これができないと「安心感の心の基盤」ができず「空虚感」が生まれやすくなります。そして「親離れ」ができにくくなります。


 現実に、境界性パーソナリティ障害の人の成育歴を調べると、1歳から3歳の時期に、両親が離婚していたり、母親が病弱だったり、家族の問題に母親のエネルギーと感心がとられていたり、母親が仕事に出て関わりが薄くなったり、祖父母が子育ての主導権を取っていたというケースが多いようです。

つまり母子分離という子供の成長にとって特に大事な時期に、愛情面で不安定な状態に置かれていたケースが多いわけです。境界性パーソナリティ障害の人のもつ中核的な症状である「見捨てられ不安」は、そこにも原因があるといえます。



3.不認証環境


 弁証法的行動療法という境界性パーソナリティ障害の治療法を確立した心理学者リネハン氏は、境界性パーソナリティ障害の人が育った家庭には、次のような特徴が見られるといいます。


本人が安心や自身をもてるように、よいところを褒(ほ)めたり、ポジティブな視点で評価を与えたり、その人を肯定するという点が不足していることが多い。悪い点ばかりをけなしたり、本人の努力に関心を払うこともなくネガティブな烙印を押したり、その人を否定したりすることが多い


 こうした非共感的で、独断的で、子どもの自信や尊厳を奪ってしまう環境を、リネハン氏は「不認証環境」と命名しました。これが境界性パーソナリティ障害の発生母体です。境界性パーソナリティ障害の人は自己否定感が強いのですが、これは「不認証環境」の産物でもあります。


 不認証環境を作る家庭には、「一見して横暴で、気まぐれで、不安定な親によってしきられている場合」があることはもちろんですが、まったく逆のケースもあります。リネハン氏は、「極めて折り目正しく、学歴や教養も高く、善良な親によって、営まれる場合もある。どちらも、親によって支配され、子どもの気持ちは、あまり汲み取られていないという点で共通している。」と指摘しています。


 問題は、どちらの場合も、親自身はそうした家庭を不健全だと気付かず、それが正しいか当たり前だと思っていることです。自分もそうした家庭で育ってきた場合には、問題点に気が付きにくいのは当然です。


 不認証環境の家庭で育ち、親によって「あたかも無意識的なプロセス」として植え付けられた自己否定的な評価や見方は、本人の「身体の中に、血肉となって刷り込まれ」ています。ですから自己否定感は非常に根深く、これを変えることは大変な労力を必要とするのです。


 親の価値感に沿って一生懸命努力して自分の気持ちを抑えてきた「よい子」は、どこかでその努力が限界にぶつかると、「親から見捨てられる」という不安がでて、うつになることがあります。実際に「失敗者」の烙印を家庭の中で押されて、他の兄弟に親の関心が向かい「見捨てられ」経験をすることもあります。

もしいつまでも親の価値感に適合した「良い子」であり続けられても、決して安全ではありません。「その子が、本当の自分というものを見つけ出そうとしたとき、あるいは、それまで親の価値感にのっとって築いてきたものが、壁にぶつかり無効とされたとき、もっと大きな打撃を蒙る」こととなるからです。この時に、その人のアイデンティティは崩壊し、空虚感親への怒りに支配されていくのです。


 この「不認証環境」という問題は、一見機能しているように見える家庭でも、よくありがちな問題です。それだけに、境界性パーソナリティ障害には、決して特別な家庭だけの問題ではないのです。


(参考文献)岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』、カッコ内の引用は本書からのものです。

(注)親の側の問題を取り上げていますが、その親も、同様に厳しい環境で育っていることが少なくありません。また、子育ての時に、夫や家族から適切な心理的物理的な支援が得られない母親は、子どもに安定した愛情を注ぐことが難しくなります。ですから教育は母親の問題として、母親を裁くことは避けなくてはならないと思います。
 

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1.決して珍しくない症状



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さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


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