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わかりやすい境界性パーソナリティ障害⑤・・・対策(2)心の傷を癒す





  1.深刻な心の傷


境界性パーソナリティ障害を持つ人の7割近くは、さまざまな虐待やネグレクト(育児放棄)などの深刻なトラウマ経験をしていると言われています。

約3割の人は、特にそうしたことがなくても、子育て中に親自身が大変だったり、子どもの心に共感できにくいパーソナリティの親の元で育つなどの原因で、何らかの心の傷を持つことが多いようです。


よくあるケースは、虐待やネグレクトの体験があり、それがいつまでも尾を引いて親へのこだわりとなったり、深い自己罪悪感を持ったり、愛情飢餓が抜けなかったり、親と同じことを子供にする自分に苦しんだりすることです。


そうした過去の傷は、一度過去を丁寧に思いだして、吐き出し、そこで本当はどういう経験をしたのかを洞察する必要があります。そして自分の物語に統合することです。これがうまくいくと、その心の傷は癒されます


通常、深刻な過去のトラウマ経験は、自己防衛のためにその経験が氷漬けになっていて、思いださないようにしています。何かの拍子で思いだすと、うつや恐怖を味わい、フラッシュバックではあたかも今虐待を受けているかのような、生々しい経験を味わいます。

ではいつまでも氷漬けにして、記憶の海に沈めておけばいいのかというと、氷になった心のエネルギーはつかえない状態ですので、生命力が低下したままです。

また、必死で抑圧していた記憶が、夢に再現されたり、フラッシュバックとなって出てきたり、潜在意識に押し込めたはずの記憶の奔流があふれ出して苦しむこともあります。



2.受容される経験が必要


そこで過去の記憶と向き合う必要があるのですが、この作業は一人ですることをお勧めできません。「過去」に飲み込まれていく可能性が高いからです。どうしても、話を受容して聴いてくれる人との出会いが必要だと思います。

誰にも言えずに一人で抱えていた経験を、誰かに受け入れてもらい、共感的に理解してもらうことが大切なのです。そうすれば心が楽になります。


信頼できて、決して裁かず、好奇の目を向けることもなく、どんな恥ずかしく惨めな経験を話しても、すべてを受け入れて、寄り添ってくれる人に出会うと、封印されていた記憶は、どんどん潜在意識の底から浮かび上がってくるようになります。あたかも解放される時を待っていた囚人のように、忘却の牢獄を打ち破ってひしめくように表に出てこようとするのです。フラッシュバックを体験することも少なくありません。


この時大切なことは、過去の記憶があたかも今の体験であるかのように感じられたとしても、それは過去の自分が味わった感情が、溶けだして、顕在意識に浮かび上がっているのであり、それを味わうということは、顕在意識を通過して記憶がはきだされ外へ出ていこうとしているのだと、受け止めることです。

パニックや恐怖に再び襲われているのではなく、過去に味わった不安や恐怖がどんななものだったかを、いま見て感じて味わっているのだと受け止めてください。

また、あまりに強いショック症状が出る場合は、思いだす作業を一時中断してください。自我が記憶の内容に耐えられるだけの強さがなく、支援も十分にえられない場合には、危険が伴います。



3.吐き出す


その記憶を心の外に出すためには、その時に体験したこと、思いだしたことを、さまざまな形で表現して自分の外に追いだすことです。これが吐き出しの作業です。


次に、その吐き出した経験を洞察します。これがうまくいくと、恐怖体験やパニックの体験から解放され、親や相手に対する気持ちが急速に楽になって変わります。その恐怖から解放されたということが、自分でもはっきりとわかります。


幼少期や思春期にトラウマ体験をした場合は、その年齢の自分の心が成長できなくて時間が止まり、成長が止まっている場合が少なくありません。その幼い自分を理解し共感してあげることで、その成長がとなった内なる子供が再び成長をし始めます。そうしたことが、記憶の解凍作業の中で同時に進行してゆきます。



4.不幸な経験を心のたい肥に変える


不幸な経験をする意味は何でしょうか。私は長野県の高原野菜の農家さんにで見せていただいた「たい肥」を思いだします。その農家さんは、高原で放牧された馬や牛の糞をもらってきて、たい肥にしていました。糞はもちろん臭いのですが、それがたい肥になる過程で熱が出て発酵します。

色々な雑菌が作用して発酵するのですが、一定以上に温度が上がるとその熱で雑菌だけが死んでしまいます。そして後には栄養素と、土壌を豊かにして野菜を育ててくれるよい菌だけが残るのです。臭いにおいはなくなり、香ばしい香りがします。そうしてできた肥料を施した畑は、野菜の生育が全く違います。立派で健康でおいしい野菜ができるのです。


不幸な経験は牛や馬の糞のようなものだと思います。それは臭いにおいがして、有害な雑菌もうようよいます。しかし、その糞をカウンセリングの中で発酵させていくと、心を育ててくれる「心のたい肥」に変わるのです。もはや自分が害され苦しめられることはなくなります。


もちろんある程度の時間はかかるかもしれませんが、自分が経験したことは、必ず自分の心を育てる栄養に変えてゆくことができると思います。それがその体験をした意味でもあると、その時に気が付きます。



5.過去とは「さよなら」しましょう


こうして思いだした「過去」は、カウンセリングの時を終えれば、忘れて振り返らないようにしましょう。洞察を得たら、過去は引きずらず、そこで決別するのです。つまり「さよなら」します。


過去と決別できた人は、思いだして怒りにとらわれるということがなくなります。


しかし、怒りにとらわれる人は、誰かのせいにして、当たらずにいられなくなります。これは過去を引きずっている姿です。そういう自分がいることを発見したら、「これは自分には癒しが必要だというシグナルだ」と受け止めてはいかがでしょうか。


 対策の続きはこちらです。
http://tanemura2013.blogspot.jp/2015_06_01_archive.html


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