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(投稿)父を想う・・・世代間伝達に気がつく

(紹介)
カウンセラーの「大」さんは、あるとき自分と息子との何となくぎくしゃくした関係が、自分と父親との関係に酷似していることに気づきました。さらに父親と祖父との関係も、矢張り似たものであった可能性が高いと気が付きました。これは「世代間伝達」と言われていることです。これは親がやっていた子どもとの関係を、無意識的に子供の代でも繰り返してしまうことをいいます。それに気がついて、親を一人の人間として公平に観察してみることができると、世代間伝達は克服できます。「大」さんの気づきと反省が、読者の家族の関係改善に役立つことを願いつつ、投稿をご紹介します。

(投稿)

1.オレオレ詐欺の電話

私が社会人になって、実家を出てから、今の実家には両親が2人で住んでいます。
老夫婦2人だけなので、よく「オレオレ詐欺」がかかってくるらしく、かかってくると、私の家に「今、お前から電話がかかってきたよ。今病院にいて、お金がないから都合つけてくれ、と言ってたよ。」と、まるで電話がかかってくるのが楽しみなように、私に電話をかけてきます。

そんな両親なのですが、父親とは、何となく気持ちが通じ合うことができず、前々から他人のような感覚がありました。家に帰っても、家に居るのが父親だけだと、必要な用だけ足してすぐに帰ってしまうので、それを父親は不満に感じていたようです。

以前に、そのことで電話越しに文句を言われたのですが、一緒にいると何か窮屈な感じがして、なんとなく話すこともイヤでした。一緒に居たくないという思いが、なぜか心の中から湧いてきてしまう自分に、何でこれほど父親から距離を置きたがるのだろうと感じていました。
私の父親は、いわゆる「仕事の虫」でした。自分の父の経営する会社の工場長をしていたということもあって、子供の面倒や家事は一切タッチせずに、自分の仕事に没頭していました。ですから、父と遊んだという思い出は、私にはほとんどありません。東京まで夜の配達をすることが多かったので、時々トラックに同乗して夜の夜景を楽しんだという思い出ぐらいでしょうか。

私の母も、そんな父と、姑との問題で、だいぶストレスを抱えており、それをよく私にぶつけていたので、そのことが私の父に対する印象を悪くした原因にもなっていたのかもしれません。

2.一枚のメモ
私が大学に通っていた頃のことですが、ある時、リビングの片隅に、小さく折ったメモ用紙を見つけました。何だろうと見てみると、父か書いたものでした。そこには、私のことが書かれていました。

「自分も年を重ねてきたが、○○(私の名前)も、よくここまで成長してくれた。私としては大変うれしいことだ。自分は子供の教育にはあまり手をかけることができなかったが、立派に成長した彼の姿を見ることができて、私は大変うれしい。私は彼のこれからの成長を心から願っている。」

この内容を見て、一瞬私は引きました。父は自分の子供のことなど、大して重要視していないと思っていたからです。

私が小学生のころ、こんなエピソードがありました。

父が仕事に行く前、父と母が口げんかをしていました。何が原因で喧嘩していたのかわかりませんでしたが、父が庭の植木を蹴飛ばしながら「こんな子供たちがいるから、俺はこんな人生しか生きられないんだ!!」と叫んで仕事場に向かっていきました。
母が「なんでそんなことを言うのよ!!」と父に向って叫んでいたのを、今でも忘れることができません。

その時は何となく聞いていましたが、自分は父にとって邪魔な存在なんだ、ということを、小さいながら心の中に刻んでいたのかもしれません。

そういう父ですから、このメモに書かれた内容は、正直言って受け入るには、かなりの心理的抵抗がありました。
3.父と初孫

それから私も結婚し、子供ができました。私は長男で、生まれた子供が父にとっての初孫でした。父は孫ができたのが大変うれしかったらしく、孫に接する時の普段とはまるで人が変わったような姿に、周りの人はとても驚いたほどでした。

そんな父を見て、ふと思うことがありました。

それは、私の祖母が亡くなった時のことでした。祖母の看病はずっと母がやっていましたが、父は全くノータッチでした。祖母が亡くなった後、父はなぜか自慢げに、「俺は母が寝込んでから、一回も母の部屋に行かなかったんだ。」と言っていたのが印象的でした。そういえば、亡き祖父が寝込んだときも同じようだったことを思い出しました。父は自分の両親をずっと嫌っていたのだと思いました。

もともと私の実家は事業を営んでおり、父が若いころから工場長となって朝から晩まで仕事に没頭していました。父は、早稲田大学を中退してから、祖父の後を継ぐために工場長として工場に入ったと聞いています。本人にとっては、自分のやりたい仕事は他にあったのでしょうが、父は長男ということもあり、家業を受け継ぐ道しか選択できなかったのかもしれません。そういうこともあって、父は両親を相当恨んでいたのかもしれません。

結婚して、子供を授かってからも、仕事が忙しくて、とても子育てに参加するどころではなかったのでしょう。私が父と遊んだ記憶がほとんどないことから、常に仕事を優先しなければならず、家族サービスといえば、配達の時に一緒に子供を乗せて東京までドライブに行くぐらいだったのでしょう。

そうしたときに、父が書いたメモのことが頭をよぎりました。
そして、父が孫と遊んでいる姿を見ながら、母が言った言葉を思い出しました。

「お父さんは、仕事に忙しくて、お前とあまり遊んであげられなかったからね・・・。」

・・・父は、自分が今までに十分に子供と接することができなかった。その代償を、孫を通して行っているのだ。

そう感じました。本当は、子供が小さいころに、もっと深く接したかったが、それが出来なかった。孫と接するのと同じぐらいに、自分の子と接したかったんだ。

そういう父の気持ちを知らずにいたことが、とても申し訳なく感じるとともに、深い感謝の思いが出てきて、涙が止まりませんでした。

4.父親と私の関係

その孫(私の長男)も、今では受験生となりました。昔のかわいさは微塵もなくなってしまい、昔を懐かしむ機会が年を追うごとに多くなりました。

そのような長男に対してですが、どこか私の心の中に、彼との距離があり、どう接していいかわからない気持ちがあることに気づきました。何となく彼と一緒に居ることに違和感を感じることがあり、その原因をつかめずにいました。

自分と子供との関係は、自分と親との関係と影響しているという話を聞き、振り返ってみると、自分の父親との感じ方と全く同じであることに気づきました。

自分が父親に感じていた感情を、そのまま自分の子供に引き継いでいたのです。

それは、私の父が、私の祖父に対して感じていたものでもあったのでしょう。私の父が子供のころに、自分の父に対して持った「負」の感情を、そのまま自分の子供である私に引き継がせてしまったということでしょう。

私が長男に対して感じているように、私の父も、私に対して、どのように接していいかわからないという感情があって、無意識のうちに距離を置いてしまったということがいえると思います。

こうしたものは、良いものにせよ、悪いものにせよ、代々引き継いでいくものだということが、自分の経験を通して知ることができました。

良いものなら引き継いでいかなければいけませんが、悪いものなら、その「因縁」(世代間伝達)を断ち切らなければなりません。私と長男との間にある問題は、自分と親との関係に原因があるのですから、さらに親と祖父との間にある問題を引き継いでいるのですから、その因果関係(世代間伝達のプロセス)がわかって初めて、父の気持ち・苦しみを理解できるのだと思います。そして、そうして私と長男との関係も解決できるのだと思います。

こうした問題は、だれにでもあることです。自分の中にある問題は、糸が複雑に絡まっているかのごとく、修復不能に見えるかもしれませんが、絡まっている糸を忍耐強く丁寧にほぐしていくことで、必ず糸がスルスルと解れ始めるかのごとく、解決の道が見えてくると思います。

私と父との関係、さらに長男との関係の原因に気づくのに、20年近くの歳月を要しましたが、その間、着実に心の成長は続いていたのは間違いないと思います。(大)

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