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境界性パーソナリティ障害8…特徴(5)繰り返される自殺企図と自傷行為




①自殺企図


境界性パーソナリティ障害の重大な特徴となる症状は、自殺企図自傷行為を繰り返すことです。自殺企図というのは、文字通り自殺を企てることです。自傷行為はリストカットやアームカットなど、自分で自分の体を傷つけることです。


まず自殺企図について説明します。


境界性パーソナリティ障害の人の自殺率は9%と言われていますが、診断基準をすべて満たしている重度のケースでは、36%にのぼるという調査結果もあります。ですからこの問題は深刻です。


このタイプの人の自殺企図には確かに、周囲をコントロールしたり、周囲の気を引くという動機も含まれています。ですが、それだけではありません。この問題を専門的に研究したリネハンという心理学者は、彼らにとって自殺は、圧倒的でコントロールできないような感情の痛みに対する解決策と見なされていると指摘しています。
 

「自殺の脅しも含め、自殺行為は、周囲の行動を引き出す上で非常に効果的です。感情的な苦痛を減少させるために効果的な、救いの手をもたらしてくれます。多くの例では、このような行動は、他人の注意を引きつけ、自分の感情的苦痛を和らげるためにできる唯一の方法なのです。」(マーシャル・M・リネハン)

 
自殺行為やリストカットなどの自傷行為の後、いったん症状が収まり落ち着きます。その理由には「自分の中に溜まっていたものを、そうした行為によって放出した一種のカタルシス効果」が働くのと、周囲の関心や心配が自分に注がれ、「愛情欲求が一時的に満たされる」からです。


ただし、何度も繰り返されえるので、周囲も「またか」と思いそれほど注意を払わないようになると、本当に自殺に至る危険があるので、決して安心はできません。
 

②自傷行為


自傷行為は、リストカットやアームカットが有名ですが、自殺目的ではない自分を傷つけるあらゆる行為が含まれます。たとえば、自分を火傷させたり、骨折させたり、頭を打ちつけたり、針で刺したり、皮膚を引っ掻いたり、髪を引き抜いたりと、さまざまな方法があります。


境界性パーソナリティ障害の方の7割以上には自傷行為の経験があると言われています。

自傷行為というのは、圧倒されるような感情的苦痛(羞恥心、怒り、悲しみ、見捨てられ感情など)を開放したり、処理するために用いられる対処方法です。


リストカットやアームカットなどの自傷行為をすることは、本人にとって大きくは二つの意味を持っています。


一つ目は、それは周囲に自分の苦しさを気づいてほしいというサインです。

もう一つは自傷行為それ自体から生じるカタルシス効果(心の奥にあるものを吐きだしてすっきりする)です。


すっきり感には生理的な根拠もあります。実は、自傷行為によって、ベーター・エンドロフィンとして知られている、麻薬のような働きをする化学物質が脳から放出されるのです。この化学物質は幸福感を感じさせてくれます。


以上のような理由から、自傷行為それ自体への依存が生まれやすく、繰り返しやすいのです。

境界性パーソナリティ障害の人が自傷行為をする理由を、さらに細かく見てみましょう。次のようなものが理由として含まれます。


・麻痺した感情や空虚感を和らげ、生きていることを実感するため。

・さらに感情を麻痺させるため。

・他者への怒りを表現するため。

・自分で思うほど自分が「悪」ではないことを、どうにかして証明するため。

・ストレスや不安を和らげるため

・苦痛をコントロールできるという感覚を得るため

・現実感を取り戻すため

・「現実」を感じるため

・感情的苦痛を他人に伝えたり、援助を求めるため

・身体的な痛みを感じることで、感情的苦痛や不満、その他の否定的感情から解放されるため

・自分に罰を与えたり、自己嫌悪を表現するため(虐待の被害者に多い)
 

境界性パーソナリティ障害の人は、強い自己否定感情罪悪感を抱いている人が少なくありません。そのため、自分を傷つける行為、自分に罰を与える行為によって「自分を罰し、痛めつけたから、もう少し生きていてもいい」という心理的な取引が行われ、「こんな自分がまだ生きている」という極度の自己否定感情を一時的に軽減するのに役立っているという側面もあります。


③解離状態


自傷行為や自殺企図に走る瞬間は、通常の意識状態ではないことが少なくないようです。特に、視野が狭まり、自我のコントロールが弱まった解離状態がよく見られるのです。


解離状態というのは、自分の意識が肉体から一時的にはなれて自我でコントロールできなくなることで、その間の記憶や意識の連続性が失われています。解離状態ではしばしばのりうつりの現象がみられて、自分が自分でない状態(自我の同一性が失われた状態)であることも少なくありません。


したがって、繰り返し行われるので「またいつものことだ」と周囲の人が油断していると、取り返しのつかない結果を招く危険性があり、注意が必要です。

境界性パーソナリティ障害の人は、潜在意識と同通している度合いが通常の人に比べるとはるかに高いという特徴があります。それゆえに、のりうつりの影響を直接的に受けやすいのです。自殺した人の想念などをキャッチしてしまうと、まるで自殺者の霊に取りつかれたようになり、自殺への衝動が激しくなります。「殺してやる」「死ね」などの声がストレートに聞こえる場合も少なくありません。それはのりうつりの想念をキャッチして、声として聞こえている状態です。解離というのは、のりうつりのおきやすい状態です。だからこそ、自殺企図に対しては、常に注意深く見守ってあげることが必要です。


今回取り上げた特徴は、診断基準の「DSM-Ⅳ」には(5)「自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し」とあることへの解説です。

続き(9)はこちらです。

 http://tanemura2013.blogspot.jp/2015/01/6.html
(参考)岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』幻冬舎新書)
 
 

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