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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

 



1.決して珍しくない症状

 

境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。
リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。

アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

 

2.見捨てられ不安と愛情飢餓


 境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。


たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。


こうした極端に不安定な気持ちや言動の元にあるのは「相手に見捨てられるかもしれない」という不安です。しかも、その「不安」は、本人が思いこんでいるだけで、相手にしてみれば全く心当たりがない場合がほとんどです。そのため何を怒っているのか、見当がつきません。


 境界性パーソナリティ障害の人は、大変深刻な「見捨てられ不安」をもっているのです。そのために、ささいな普通の人には何ともないほどの、ややそっけない振る舞いに対しても過剰に反応し、「あなたは私を本当には愛していない」、「もうお別れします」と突然攻撃的になって、関係を断とうとすることがあります。


関係が深くなればなるほど、依存への欲求の増大と裏腹に見捨てられることへの不安も増大するため、ものすごく親密に信頼してくれていたかと思うと、突然拒絶し攻撃的になるという変化に驚かされることになります。

通常は過去に親や兄弟などに傷つけられた経験があるため、それを無意識に関係が親密になった相手に投影してしまうので、ささいなことをきっかけに不信感と攻撃的で警戒的な気持ちが湧いてきて、それを本人も止めることができないのです。

この障害を持つ人に共通する特徴は、根底に深刻な「愛情飢餓」を抱えていることです。愛情飢餓を抱えているので、それを満たしてくれると思える人には際限なく要求をしてきます。その要求がどんどん重くなるので、半端なことでは支え切れなくなります。


 3.特徴的な雰囲気
 
この障害をもつ人はしばしば非常に印象的で人を惹きつける雰囲気をもっています。注意を向けずにはいられないような魅力とオーラを放っている人がいます。あるいは、ほっておけないような、保護本能をくすぐるものを感じさせる人もいます。

 とても繊細で、思いやりのある優しい気づかいをします。そうかと思えば、突然、びっくりするほどストレートな言葉で、痛いところをグサッと突いてきたりもします。相手のことによく気がつくサービス精神があるかと思うと、物凄く鋭く相手を打ちのめす言葉やドキッとするような大胆な振る舞いをするのです。そこに、枠にはまらない新鮮さを感じ、ともすれば魅了されることも少なくありません。

 人間関係では、あっという間に心の距離が縮まって、恋人同士のような親しみを感じさせ、甘えてこられるので、相談に乗ってあげずにはおれなくなります。ところがそうして親密に相談に乗り出すと、相手に不可解な言動が出るようになって戸惑いを覚えはじめるのです。

ある日突然、「もう別れます。今までありがとう」とか、「これ以上一緒にいると、きっと私のことが嫌いになり、私を見捨てるので別れましょう」と言って、連絡ができなくなることがあります。驚いて翌日自宅へ行くと、一日中泣いていたことが分かったりします。打ち明け話を聞くと、その内容の深刻さに圧倒され、守ってあげたくなります。

ところが、ある日突然「リストカットした」という連絡が入ったりします。また、突然、睡眠導入剤を大量に飲み倒れているということもありえます。

境界性パーソナリティ障害の人に力になろうとしはじめるや、平穏な日々が終わりをつげ、ドラマのような毎日を経験し始めることがすくなくありません。


4.発症の原因ときっかけ

 境界性パーソナリティ障害でよく誤解されるのは、この障害を「困った性格」だと勘違いされることです。実際には、そういう性格の人なのではなく、あるきっかけで「発症」(症状が現れる)するのです。ですから境界性パーソナリティ障害の人にはさまざまな性格の方がおり、正反対の性格の人でも同じ様な症状を呈します。ようするに、どんな性格の人でもいくつかの原因が重なると境界性パーソナリティ障害の状態になりえるわけです。

境界性パーソナリティ障害の原因は、長い時間をかけて用意されており、たいてい過去に愛情を奪われたり、見捨てられたような経験をしています。親との死別や生き別れといったわかりやすいもの。両親がそろっているにもかかわらず、母親が働いていて早いころから手元から離されたり、弟妹の誕生で両親の愛情が自分から離れがちという場合。母親が子供の気持ちを汲み取るのがうまくなく、寂しさをケアされないまま、見捨てられた感情を溜めて育った場合など、さまざまです。
特にDV(近親者の間に起きる暴力)や性的虐待などで深刻な心的外傷経験を持っている場合には、境界性パーソナリティ障害が起こりやすいのです。
 
そうした経験を抱えた人が、新たに喪失体験や見捨てられる経験、もしくはそれを想起させるような経験をすると、それがきっけとなって「発症」します。自殺の企て、手首を切るなどの自傷行為、危険な性交渉、非行、薬物乱用にエスカレートする場合でも、そうした体験がきっかけになったりします。

大変深刻な症状が出たとしても、境界性パーソナリティ障害は必ず治ります。永久に続く固定した性格ではないからです。多くは思春期から青年期、時には30代になって始まります。その特徴は嵐のような感情と行動の失調状態が起きることです。しかし、止まない嵐がないように、通常は数年から十年以内には嵐は終わりに向かいます。

 回復に向かうと、境界性パーソナリティ障害に特有の「症状」は薄れていき、本来の性格に戻っていきます。以前と同じに戻るのではなく、大きな試練を経験することによって成長し、成熟した姿に「脱皮」を遂げていくのです。

こうした方は、大変生きづらい中を乗り越えるために「鋭敏な感性」や「人に対する献身や思いやり」「常識の捉われない個性」を育てていることが多く、それがその人の魅力となります。さらに本人が努力し心が成長することで、それが「人に奉仕する仕事能力」や「個性的な表現能力」へと開花させている人も少なくありません。

境界性パーソナリティ障害2はこちらです。
 http://tanemura2013.blogspot.jp/2014/12/blog-post_17.html

(参考図書)岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』幻冬舎新書)


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境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

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「顕著な気分反応性による感情不安定性」・・・(例)通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い深い気分、いらだたしさ、または不安。
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