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(投稿)ありがとう


1.祖母と母


私が30歳の頃に祖母は亡くなりました。

私が生まれた時は、祖父と祖母と同居していたのですが、

小学校の頃に祖父が亡くなってからは、祖母と、父親、母親、私で暮らしていました。

祖母と母親は、仲が悪く、そんな様子を見ても、父親は仕事を理由に仲裁に入ることすらしませんでした。

私は、毎日のように、祖母、母親の両方から、相手の愚痴を聞かされて育ちました。

私の母は、祖母からは、いじめに近いような扱いを受け、私は母親から、彼女がいかに不遇の目にあってきたか、を連日のように聞かされました。

何かをしてあげても、「ありがとう」一言すら言わない、と母親は祖母に対してはかなりのストレスを感じて日々を過ごしていました。

 
そんな祖母でも、時がたつとだいぶ体も弱ってきました。そうすると、今度は父親以外の自分の息子や娘達(父親は5人兄妹でした)を味方につけようと、わざわざ電話をして

「助けてくれ。このままいると、私は殺されちゃうよ。○○さん(私の母親)に説得して、私をいじめないでくれと伝えてくれ。」という話をしたそうで、それを真に受けた兄妹達が、母親に電話してきたという話を聞きました。

私が見ても、母親が祖母をいじめている姿は見たこともなく、全く祖母の狂言だったのですが、そのとき母親はとても悔しい様子をしていたのが、いまだに目に焼き付いています。


2.祖母の介護


祖母は、そのうち、骨粗鬆症がひどくなり、入退院を繰り返すようになりました。ちょっとした衝撃でも骨を折るようになり、そのたびにボルトで固定する手術をおこなっていたので、祖母にとってはとても苦しい日々であったようです。歩くこともできなくなり、とうとう寝たきりの状態になってしまいました。
 

母親は、自分の仕事もできず、介護の専念するようになりました。どうしてこんな目にあうのか、なんで私が嫌いな母親の面倒を見なくてはいけないのか。実の息子娘達は、私だけに介護を押しつけて、家にも来ずに何も手伝わない。なんで他人の私だけが・・・。

そうした何ともやるせない思いが、ずっと母の心の中にあったそうです。
 

そんな祖母が大嫌いな母でも、祖母が痛がっている姿はとても見るに堪えなかったそうです。涙を流しながら「痛い、痛い」と苦しむ祖母に、「がんばって、がんばって」と必患部をさすって、痛みを和らげようと、母も必死でした。
 
あるとき祖母が、母親ににっこり笑いながら言ったそうです。

○○さん、ありがとう。

そのとき、母親の心の中から、いままでの祖母に対するわだかまりや憎しみが一気に溶けて飛んでいったそうです。

母親も、涙を流しながら、「おばあちゃん、大丈夫だからね。がんばって。」と励ましながら、看病を続けました。

それから、まもなく、祖母は入院し、そのまま亡くなってしまいました。


3.ただ一人、泣き崩れる母


葬式の時にわかったことですが、祖母は実の子供からは相当嫌われていたようでした。

もともと性格が良くない祖母でしたが、御通夜の時に、祖母の遺体の前で、実の子供達がさんざん祖母の悪口を話していました。実の母親が亡くなっても、悔やむこともせず、悪口を言い続ける子供っていったい。それも遺体の前で・・・。


当然のことながら、遺体を焼いても、涙を流している祖母の子供達は一人もいませんでした。

ただ一人、私の母だけが、泣き崩れていました。


祖母の子供達(私の叔父叔母になるのですが)は、私の母親が祖母をいじめていると思っていました。この泣き崩れている母を見て、彼らはどう思ったのでしょうか。


祖母が亡くなった後も、いなくなった祖母の部屋を片付けながら、しばらく涙がとまらなかったそうです。「おばあちゃん、わたしはとても寂しい。これからどうやって生きていけばいいの。」

そう思うと、涙が止まらなくて仕方なかったそうです。
 

4.ありがとう


・・・祖母が母に言った「ありがとう」という言葉は、本当に感謝の思いが込められていたのでしょう。

憎しみと悔しさに満ちていた母親の心の中の瓦礫を、一瞬にして溶かしてしまったのです。

私はこの、母親と祖母の話を思い出すたびに、感謝の思いの力のすごさを感じます。

「感謝」から「許し」が生まれ、また「許し」が「感謝」を生みます。

この世の中が、「感謝」で充ち満ちたならば、きっと素晴らしい世の中になるのにな。

「感謝」で満ちた世の中を創っていきたいな。

そう思わずにはいられません。


「感謝」と「許し」の素晴らしさを、亡くなった祖母と、母親から教えていただいた。

そんなエピソードでした。(大)

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