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人格障害④・・適応戦略の観点から



1.生き残るための適応戦略として

 
人格障害を「生き残りをかけた適応戦略の産物だ」と考える心理療法の理論があります。認知療法です。

 認知療法は、心的な過程(認識し理解し行動する)を情報処理としてとらえるのが特徴です。環境からの入力情報を、選択・統合して、行動とする情報処理の仕方には、人によってそれぞれ特有のパターンがあります。これをスキーマと呼びます。スキーマとは、人がこれまでの体験の中で発達させてきた物事の受け止め方(認知)や行動様式のパターンです。

人格障害を持った人は、通常は本人にとって過酷な家庭環境で成長します。そのため人格障害の人は、偏ったスキーマ(認知とそれに基づく行動様式のパターン)を身につけています。それは過酷で歪んだ環境で生き残るために身につけたプログラムです。これは幼い時には生き残るために有効(適応的)でした。

しかし、新しい環境の中では、そのプログラム(スキーマ)は現実にそぐわない、適応するうえで不利な信念や行動戦略(方略)となってしまっています。しかし本人は過去に身につけたプログラムを変えられなくて、不適応を起こし苦しんでいるのです。これが人格障害です。
 

2.不適応な信念

 
 人格障害の人は、それそれ固有の特徴的な信念と行動様式を持っています。その一例を紹介します。
 

 自己愛性人格障害の人は、「自分は特別であるから、特別扱いされなければならない」「自分は優れているから、人はそのことを認めねばならない」という信念を持っています。その信念に基づいて自分が優れていることを証明することに、命を燃やします。優秀性証明願望に憑りつかれます。

 
 境界性人格障害の人は、「自分は価値のない人間だから、みんな見捨てるだろう」という信念を持っています。そのため見捨てられることを恐れて、死に物狂いにしがみつこうとします。その結果、相手は過重負担になり、結局は当人の恐れていた結果を招きます。

 
 演技性人格障害の人は、「人から注目されなければ、私は無価値になる」という信念をもっています。その偏った信念に基づいて、誰かれかまわず気を引くような行動をとったり、貴族の末裔であるとか、同情を引く不幸な生い立ちを、まことしやかに、でっち上げてしまいます。

 
 反社会的人格障害(サイコパス)の人は、「私は侵略者でなければならない。さもないと私の方が犠牲者になってしまう」「他人は搾取的であるから、私には彼らを搾取し返す資格がある」という信念を持っています。その信念の元に、暴力的で犯罪的な行為をする人と、言葉巧みに他人を操って搾取する巧妙なペテン師になる人の二通りの行動パターンに別れます。

 
 人格障害ごとに、こうした歪んだ信念や行動様式があるため、それをまず見抜くとともに、どういう過程で形成されてきたのかを、共感的に理解することが大切です。

 その人にとってそれは、幼少期を生き残るために身につけた生存戦略なのです。もしくは幼かった頃に、満たされなかった欲求を、紛らわすために不適切に身につけてしまったものなのです。

 人格障害の人に、どことなく子供っぽさを感じるのは、彼らが「子供時代の課題を乗り越えておらす、大人になっても、子どものような行動をとってしまう」(岡田尊司著『パーソナリティ障害』)ためです。

したがって、まず過酷で歪んだ生い立ちの過程で身につけた認知(受け止め方)と歪んだ信念や偏った行動様式が、すでに不適応なものとなっていることを受け入れて、これをより適応的なものへと修正しようと努力することが不可欠です。それは子供時代に未解決だった、成し遂げるべき課題を達成して、次の成長の段階へと進むことでもあるのです。
 
人格障害⑤その原因
<連絡先>
種村トランスパーソナル研究所
心理カウンセラー:種村修
090-8051-8198
メール:tanemura1956@gmail.com

コメント

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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。 リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

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境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

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境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
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もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。 もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。

②怒りの奥にある生き残り戦略…

境界性パーソナリティ障害5…特徴(2)対人関係の不安定さ

①理想化とこき下ろし

境界性パーソナリティ障害の二番目の特徴は、人間関係が不安定で変動が激しいことです。
「理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係」というパターンがあるのです。


理想化」というのは、「最高だ!」「こんな人に出遭えたのは初めて!」と感じて、相手を理想の人だと思いこむことです。


境界性パーソナリティ障害を持つ人は、自分を支えてくれ、愛情飢餓を癒してくれる人を常に求めています。ですから、これはという人物に巡りあえると、急速に相手に対する期待が高まります。そして「この人こそ、自分が求めていた人だ!」その思いが膨らむと、極度に理想化したり、万能な存在であるように思いこみやすいのです。

このタイプの人は、心の深いところで母親や父親の代理を相手に求めています。ですからその欲求を満たしてくれる人に出会うと、どんどん依存を深めていきます。

さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


もし恋人関係になったとしても、この関係は長続きしません。どこかで相手が支えきれなくなるからです。相手がその人のもつ過大な期待にしり込みしたり、あるいはもう飽き飽きしたという態度を取ると、境界性パーソナリティ障害の人は「見捨てられるのではないかという不安」に捉われます。
そこで必死にしがみつこうとしたり、相手の気を引く行動をとります。

それでもさらに相手が引くそぶりを見せると、激しい失望を感じて、「裏切られた!」と怒りを感じます。そうすると、今度は相手が攻撃の対象になりかねません。


些細なきっかけで、その人の何らかの要求が満たされないと、評価が180度逆転して、罵詈雑言を浴びせることもありがちです。そして「最低!」「信じて損した」「私の時間を返してよ」という具合に、激しい言葉を浴びせるのです。言葉だけでなく、行為で迷惑をかけることもあり、相手は翻弄されていくことになります。
②アンビバレント(両価的)な感情
このタイプの人を理解する鍵は、「アンビバレント(両価的)」な感情にあります。